いかないで

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 カナちゃんの家に着くと、アンナちゃんが代表してチャイムを鳴らした。カナちゃんの家はたしかに大きかった。  真っ白な壁に、三階建ての家で、駐車場も高そうな車が二台も駐まっているし、玄関から見える庭には公園みたいに、滑り台やぶらんこがあった。  チャイムを鳴らすと、玄関から出てきたのは、ピンクのフリルが付いたドレスを着たカナちゃんが出て来た。 「カナちゃん、お誕生日おめでとう!」  みんなが声を合わせてカナちゃんに言った。カナちゃんはピンクのドレスをふわりとなびかせて、満面の笑みで「ありがとう!」と言うと、カナちゃんの後ろから、お母さんだと思われるおばさんが出てきて、 「みんな、よく来てくれたわね。さあ、入って!」  髪が長いくて、目もぱっちりしてる綺麗なお母さんだなと思った。ちゃんとお化粧もしているし、カナちゃんもどこかお化粧みたいに、唇がちょっと赤くなっていた。  みんな次々とカナちゃんの家に入って行く。僕は、じっと玄関前で立ち止まっていると、カナちゃんのお母さんが、優しく微笑みながら、 「あなたも、どうぞ。来てくれてありがとうね」  そう言って、僕の顔をじっと見てくると、僕は急に胸が痛くなって、咄嗟にランドセルに入っていたカナちゃんへのプレゼントを取り出すと、カナちゃんのお母さんに、 「これ、カナちゃんにプレゼントです。渡しておいてください。僕は帰ります」  僕はおばさんと目が合わないように目を伏せて言った。すると、カナちゃんのお母さんは困った様子で、 「ありがとうね。でも、せっかくだから直接渡してあげてくれないかな? 今日はパーティだから美味しいご飯も用意してあるし、ケーキも大きいやつがあるのよ。あなたも、ぜひ、食べて行って欲しいわ。せっかく、こんなプレゼント下さるんだもの。それくらいご馳走させてくれないかな?」  僕の目線に合わせてカナちゃんのお母さんは言う。僕は、どうしていいのか分からなくなって、胸がずっと苦しいし、でも、この場から逃げてしまいたいけど、カナちゃんのお母さんが僕のことを誘ってくれること自体はなんだか、嬉しくて、僕がここにいても良いのなら、もう少し、いてみようと思った。 「……わかりました。お邪魔します」  僕はぼそりと告げると、カナちゃんのお母さんは僕の手を握って、 「ええ、こちらこそ、ようこそ」  そういうカナちゃんのお母さんの柔らかい声が耳に響くと、僕は泣いてしまいそうになった。僕より大きくて、温かい手が僕に触れていると、そこから僕が溶けていってしまいそうな気がした。
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