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自分で潮時とかを考えていながら、ふられると思うと途端にこれだ。俺は、おびえながら、祐希の次の言葉を待つ。
「そろそろ、一緒に暮らさないか?」
「…え?」
「いやか?」
「…え?なに…」
人間、思ってもいないことを言われると、頭に入ってこないものだ。
言われた台詞を反復して、噛み締めてようやく意味が理解できてきた。
「なに…泣いてんの?」
「え…」
身体は、にぶい頭より先に理解して、反応していたらしい。
「泣いとらんし!」
「めちゃくそ泣いとるがや」
祐希が笑いながら言う。
「なんで、そんな急に…」
「急じゃないて。ずっと考えとったで。仕事のことで、すれ違ったり、なかなか会えなかったりして。そういうの、もう嫌だなって」
ちゃんと、考えててくれてたんだ。祐希も。視界が涙でぼやけて何も見えない。
「一緒に暮らしたってすれ違いはあるがや」
鼻声で、俺は形ばかりの抵抗をする。
「ま、そうかもだけど」
「どこにするんだて、お互いの仕事の都合もあるし」
俺もほとほとよくわからないことを言い出している。
「住めばなんとかなるだろ。尾張名古屋は城でもつ、っていうがや」
祐希がドヤ顔で答える。
「ここは東京だわ、たぁけ」
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