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 うすうすと、わかってはいたことだが、やはり本人の口から聞くとショックだ。 「中村は名古屋の大学行くん?」  こちらを向いて武田が聞いてきた。 「ん」  草をぐいぐいといたずらに引っぱりながら俺は答える。 「M工大目指す」 「ほうか、ええとこだなあ。勉強頑張らんとだ」 「うん」  俺は草を抜いて投げた。二人の間に、沈黙が流れる。  来年の春には、もう武田はいないのだ。そのことが頭をよぎってしまったら、鼻の奥がつんとしてきた。  涙が出そうだ。まずい。  男同士で、ただの友達でしかないのに、泣いてしまうのは変だろう。  俺は涙を見られないように、顔を背けた。  そのとき、武田がぐっとこっちに迫ってきた。
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