帰省

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 武田は俺を見つけると、軽く目で合図した。バスを降りるとそのままふらふらと預けていた荷物を取りに行く。  彼以外の乗客はすでに荷物を受け取っていて、バスの乗務員は早くしてほしそうにしている。俺も同じ気持ちだ。 「遅せえて!」  俺が言うと、なにが可笑しいのか、武田が薄く笑う。 「なんだて」 「それ」  ぱんぱんにふくらんだリュックを背負いながら武田が言う。 「名古屋弁、聞くと帰ってきたなと思うなー」  にっこりと笑いながら言うので、さっきまでの苛立ちも全部、いいかと思えてしまう。
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