帰省

4/4
前へ
/10ページ
次へ
「疲れとらん?」 「疲れた!早く休みてえよ」  標準語でそう言う武田のことを、少し遠く感じる。東京の匂いをまとっている彼を感じる。 「メシは?」 「あーメシ!食いてえ!」  それでは、と、俺たちは地下の食堂街へ向かう。 「なに食う?」 「なんでもいいよ、味噌煮込み、きしめん、あんかけスパ…」  俺は吹きだした「全然なんでもよくないがや」全部、名古屋の名物だ。 「やっぱ離れると、恋しくなるもんだで」  武田が、名古屋弁でそう言う。 俺は武田の肩をぐいっと引き寄せた。  武田は一瞬驚いた顔をして、そのあとはにかんだように笑う。俺も笑う。  そのまま俺たちは食堂街へ消えていった。夜はまだ長い。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加