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今より少し前、帯刀は社食近くの柱の陰に立っていた。
ちょっと隠れてみたつもりなのだが、身体が大きいので、かなりはみ出していたと思われる。
何人もに声をかけられた。
「春成課長ー。
社食、行かないんですか?」
「ああ、あとで行く」
とみんなに返しながら立っていると、ようやく廊下の向こう側から、羽未が現れた。
羽未は急いでいるのか、ちょっと小走りに社食に駆け込む。
その後ろから少し遅れて男性社員が社食に向かっているのが見えたので、帯刀は不自然でない程度に早足になり、社食に入った。
トレーを取って、列に並ぶ羽未の細い背中が見える。
帯刀はあまり音を立てずにトレーを取り、静かに羽未の後ろに並んだ。
だが、何故か自分に気づいた羽未が、ひっ、という感じに振り返った。
……振り返る前に、すでに怯えていたように見えたのだが、気のせいだろうか、と思っていると、
「……は、春成課長。
オツカレサマデス」
と羽未はあらかじめ録音してあったのか? と問いたくなるような単調さで挨拶してきた。
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