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脱ぎたてのTバックをくれ
「たぴおか!」
「あら、なにかしら?」
「俺、たぴ岡のファンなんだ! これ読んでくれ!」
そう言って男はファンレターを渡して去って行った。
受け取ったのは、たぴ岡みるく。Tバックが魅力のグラビアアイドル・十八歳。高三。ミルクティーブラウン色のロングヘアがそよ風になびく。
ファンレターをくれた男は近くの高校の制服を着ていた。
「ラインやメールより手紙が好きだって言ったら、ファンレター増えたわね。手紙の内容も切手もそれぞれ個性があっておもしろいわ。」
自分の部屋で封筒を開けたら、便箋と黒いレースのTバックが三枚入っていた。
「あら、かわいいTバック。」
早速一枚履いて鏡をみた。自分のおしりに見とれるたぴ岡。
「フフ、いつ見てもいいおしりね。」
手紙を読み進めると、自己紹介とファンになったきっかけが書いてあった。同い年だそうだ。手紙の最後に
「脱ぎたてのTバックをくれ。この三枚のTバックをそれぞれ履いて【洗わずに】送り返してくれ。」と書いてあり、返信用封筒が同封されていた。
「やだ、変態! 三枚も何に使うの? 一枚目は観賞用? 二枚目は保存用? 三枚目は?」
たぴ岡は事務所に報告をした。
● ○ ○
数日後、ショッピングモールにてたぴ岡みるくの握手会。Tバック写真集を買った人は握手できる。
「たぴ岡! 今回の写真集も良かったよ!」
この前ファンレターの中にTバックを入れてきた男が握手会に並んでいた。
「あら、この前の……。伊草くんね。」
たぴ岡はファンレターに書かれていた名前を思い出した。
「覚えてくれたのか!」
「ええ。」
要注意人物ですもの、覚えているわと、たぴ岡は思った。
「あのさ、まだTバック届いてないんだけど!」
「送るわけないでしょう。」
「えっ! だめ?」
「だめに決まってるでしょう。脱ぎたてのTバックくださいなんて、無理よ。」
「なんでだよ。」
「汚いでしょ。それにあなただけ特別扱いはできないわ。何で三枚とも送り返してほしいのよ。何に使うの?」
「それは想像にまかせる!」
伊草は警備員に退場させられた。
「ギャー! 俺握手してないんだけど!」
熱烈ファンというより変態ファンだわと、たぴ岡は思った。
○ ○ ●
一週間後、登校中。
「たぴ岡! おはよう!」伊草がやってきた。
「あら久しぶりね。」
「たぴ岡は、高校卒業後は進学するのか?」
「大学も専門学校も行かないの。芸能活動を続けるわ。」
「そっか。じゃあ芸能事務所に就職だな。」
「伊草くんはどうするの?」
「俺はアメリカに留学する!」
「えっ、じゃあ。」
「握手会行けなくなるんだ。さみしいな。」
「そうね。」正直ほっとしたわと、たぴ岡は思った。
「あのさ、話があるんだけど……」
「なに?」
「俺はたぴ岡が大好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
「……ごめんなさい!」
「えっ、だめか……」
「でも伊草くんが留学したらまたファンレターほしいわ。国際郵便って憧れてるの。」
「おう、わかった。よろしくな!」
● ○ ○
数ヶ月後
マネージャーが
「たぴ岡さん、ファンレターいっぱい届いてるよ。」と紙袋に入れて渡してくれた。
「あら。」
留学中の伊草からの封筒を見つけた。事務所の住所がローマ字で書かれてある。
「封筒も切手も日本製とは雰囲気ちがうわね。」
開けてみる。
『たぴ岡へ、
たぴ岡に会えなくて寂しい。
これを俺だと思って、大事にしてくれ。』と書かれてあり、彼の使用済みと思われるTバックが同封されていた。
「何これ、変態!」
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