第3話 ポンプ車出場

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   町畑出火報。町畑市図示町〇番△号。住宅出火。  家にいた僕は原付で詰所に向かった。詰所ではすでにポンプ車は車庫からだされ、車庫のシャッターを閉めようとしているところだった。急いで刺子(さしこ、防火服のこと)を着てポンプ車に飛び乗った。  機関員(運転手)はベテランの団員、助手席に分団長、後部座席に僕と先輩の4人で出場した。後部座席の人は地図をみて近くの消火栓を探すのだ。僕は機関員に消火栓の場所を指示して見事、2番目に近い水利を確保。今まで、他の隊や消防署が先着していることがほとんどだった。この時はしてやったり!下車すると焦げ臭い、煙も出ている。放水が必要だ。でもここからは初めての動きだ。分団長は先に火点へ行き状況確認。機関員は消火栓を開けて放水の準備をする。後部座席に乗った僕と先輩はホースカーをポンプ車から降ろし火点に向かう。ホースカーからは少しずつホースが落ちてホースを延ばしていくはずだった。  5メートルほど進んで先輩が「待った!!!」。なんと僕は気が焦るばかりホースをポンプ車につながずに火点に走り出してしまったのだ。つながっていないホースは展張されることはない。それでは水は送れない。全く意味がない。ただリヤカーにホースを積んで移動しているだけになってしまう。  戻ってホースをつなぎ、再出発。消火栓から火点までは50メートルほど。火点に着いた時には、先着した消防署の水槽車の水のみで鎮圧されて、ボヤで済んでいた。  僕としてはかなり苦い経験になった。出したホースはとりあえず丸めて詰所に帰る。そして、次に備えて準備をするのだ。このころにはほかの団員も詰所に集まっており、皆でホースカーへの積み込みをするのだが、”島田折り”という蛇腹の様にするのに多少時間がかかる。この時にみんなの笑いものになってしまったのだった。
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