月を食う鬼

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 赤鬼の正体は、思わぬところから判明した。  腹立たしいことに、教えてくれたのはかの鬼大将だった。あの大鬼は、とっくに赤鬼の存在など知っていたらしい。  知っていた上で、己に敗北した鬼と、小鬼とのささやかな酒宴を放置し、放置しながら、嘲笑ってもいた。 鬼大将は青鬼の優越感などとっくに見抜いていたし、小鬼の不幸で己の不遇を癒やす青鬼の卑しさを、他の鬼立ちの前で指摘しても見せた。  ようは最も効果的に、かつての敵であった青鬼を嬲る為に今まで放置されていたのだ。  「お前には、あんな小鬼の手下一匹がお似合いよ」  げらげら、げらげら。 鬼大将は青鬼を指して嘲笑する。  「さすがは昔、この俺と山を二分した鬼よ。地獄の鬼を手下にするとは恐れ入った」  げらげら、げらげら。  「おやおや。知らぬ、と? おいおい、お前さんはこの俺が知らぬことを知っていたのだろう? なのに、あの鬼を知らぬと言う。これは傑作」  やれ、皆笑え。笑ってやれ。この独り善がりな敗北者を。  げらげら、げらげら。  その日の鬼の集会で――鬼大将を中心に、腰巾着たちの笑い声は、高らかに山中に広がっていた。  「あれは餓鬼よ、地獄の鬼よ。そも、元は鬼ですらない、地獄に落ちた人間の慣れの果てよ」  餓鬼。―――それが赤鬼の正体であった。
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