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 地下深くに吸い込まそうな気配がして慌てて目を開けようとするが、瞼が重くてなかなか開けることができない。早めに布団に入ったのに明日のことを思う緊張のせいで安心して眠りにつくことができず、何かに怯えるよう恐い夢を見ては、螺旋階段の一番上から真っ逆さまに落ちる辺りで毎回目が覚める。  早く布団に入ったのに普段より睡眠時間が少ないだなんて本末転倒だけど、長い人生そんなもので「備えあれば憂いなし」なんてことはまずありえない。ただ、「備えなければ憂いしかない」事態を避けるため、進んで備えなければいけないのだ。    ここにたどり着くまで長いようで短くて、いややっぱりとんでもなく長くてようやく彼に会えると思うと全身の毛が重力に逆らい、怒髪天を貫くみたいなほど体が熱くなる。怒髪天を衝く?だっけ。うろ覚えだし、怒ってるわけでもないから使い方が間違ってる気はするけどそんなことはどうでもいい。    サッカーの試合開始直前に整列するあの感覚に似ていて、すごく緊張しているのに緊張を見せてはいけないという必要以上のプレッシャーに襲われて、結局体がガチガチになってしまうあれともいえる。  だが、その感覚が嫌いではない。決して緊張してはいけない、普段どおりにしなければ、という脅迫観念に押し潰されそうになりながら、戦場に赴く兵士の鎧を身に纏っているかのよう走り出す。例え周りに、子育てが一段落して羽を伸ばすおばさまたちしかいないとしても。
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