明日も今日も

1.

　ただし、時間とお金があるならやっぱり映画館だ。できるなら何日間もずっと映画館の中で過ごしたい。素敵な作品に出会えたならば、しばらくその場の空気を味わっていたいし、視聴後もそのまま座席の温もりに身を包まれふわふわした気持ちでいたい。

　溶けかけの氷を一個一個食べて最後まで飲み干したいし、そのまま次の映画が始まるまでだらだら過ごしたい。だけど今の総入れ替え制の映画館では、貸し切りにでもしない限り無理なお願いである。

　僕はそんなとき、ある一つの作品に出会った。悪の超能力者と、正義感溢れその超能力に打ち勝てる力を持つ男とのアクション映画。まあ、たいした内容がないような韓国のアクション映画だが、地元の映画館では見れないのでわざわざ電車で一時間半かけて見に行った。

　別に苦ではない。仕事でも遊びでも学校でも何でも、都心に出ないとダメなことってよくあるからもう慣れっこだった。その映画が失敗だったらもう一本くらい見て帰れば問題ないだろう、くらいな軽い気持ちで電車に揺られていた。