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罪人の王女
自由が欲しかった。
そんな単純でわがままな願いのゆえに、私はここにいるのです。
広くて、薄暗い地下牢の中に。
罪人を収容するために作られた大きな地下牢を、私1人のためだけに設けられたのは、国王の配慮があってのことでした。ですが、この地下牢は想像を絶する劣悪な環境でございました。
窓もない地下牢に空気の流れはほとんどありません。底に溜まる腐敗した空気を吸い続け、私の口は咳を零すようになりました。
お食事は3食ございました。食べ残し、もしくは口にするには適切なものじゃなかったのでしょう。齧られているパンと味の薄いホワイトスープが、1つのお皿にないまぜになっている雑なお食事しか出されませんでした。
私はお食事を残さず食べました。寂しさと不甲斐なさを埋めるように、冷めきったスープと萎えたパンを口に入れる日々でございます。
地下牢に入れられて間もない頃は、涙が止まりませんでした。私は本当に恵まれていたのだと、身をもって思い知らされたのです。
お食事を運んで下さる執事のハウナーは、以前と違った態度を示すようになりました。王室に入る執事とは思えぬ汚らしい言葉を浴びせ、悔い改めよと執拗に慙愧の念を抱くよう迫りました。私は王女でありながら、罪人の身になったのです。
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