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雪のようには解けない
冷たい風が暗い街並みを駆けていった。週末の駅前はたくさんのひとでごった返しているけれど、高い人口密度に反してみんな寒そうに身体を丸めている。最近寒さがずっと和らいでいたから、みんなもう春の予感に心弾んでさえいたのに、また道路の端は雪で汚れていた。
ポケットに入れた手がときどき、となりを歩くきみの腕にぶつかって、そのたびにぼくは謝らなければいけないんじゃないかと、一瞬だけ考えて黙ったままでいた。
「なんで嘘ついたの」
ぼくは怒りで、どこに向かうかとくに考えないまま歩いていた。このまま行けば、ぼくたちが青春を過ごした高校へと着くだろう。きみと毎日一緒にいた、懐かしい場所だ。
「なんでだろうなあ」
出来心って怖いなあ、と笑っている。ぼくの腸が煮えくりかえっていることなんて、こいつにとっては大したことではないのだ。それに気づいて、またこめかみに力が入る。
ちらりととなりを見ると、やっぱりそこには白い包帯が見えた。きみの頭を包むやわらかな布を睨んで、また前に視線を戻す。その下にある傷がどれくらいの大きさのものか、知りたいようで知りたくなかった。
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