「ゆるやかな余韻を」

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「ゆるやかな余韻を」

この日はたいてい 都会の夜は 思い思いの仮装をした人々で 溢れるそうです。 一夜限りの饗宴を 様々な形で楽しみます。 カフェでも時期に似合うよう 思考工夫のスイーツを 看板に掲げるのでした。 興奮冷めやまぬ喧騒が 遥か彼方で起こる頃 お客様がご来店。 銀色の髪に背の高い 看板娘も一瞬立ち止まる美しさ。 「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ。」 私の役目は変わりません。 ありがとうと微笑んで 近くの席へお座りに。 色々探してみたけれど どこも少々華やかすぎて 私の好みに合いませんでした。 お客様はそう言って  遠くで光る ネオンを見ていました。 「当店では お客様のご要望に合ったお料理を提供します。」 私はマニュアル通りに説明します。 するとお客様は 看板娘を撫でながら言いました。 私にピッタリの飲み物を下さい  と。
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