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「嫌い 嫌い 大好き」
人がまばらになった頃
ひと回り大きな上着を羽織った
小さなお客様がご来店。
「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ。」
余計なことは聞きません。
ここは、お客様をもてなす場所です。
看板娘がお客様に擦り寄ります。
彼女なりの歓迎の印なのです。
お客様は一瞬目を輝かせましたが
何かを思い出したように虚ろな目で
手前のテーブル席に座りました。
どうして子どもがこんなところに?
周囲の客の見えない視線が注がれます。
お客様は小さな手で
膝をギュッと握ります。
看板娘は対応できぬと
私にヘルプを出しました。
私は冷水を運ぶついでに
看板娘と入れ替わります。
「当店のご利用は 初めてですか?」
「・・・」
「当店では お客様のご要望に合ったお料理を提供いたします。」
「・・・」
お客様の視線は 床に注がれます。
それはこちらを拒否しているようにも見えますし
何かを察してほしいという願いのようにも見えました。
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