「こんな日も ありますね」

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「こんな日も ありますね」

本日最初のお客様 カランコロンとベルが鳴り 馴染みきれないスーツの上着を 右腕に 傷一つないリクルートバッグを 胸に抱え 体全体で覗き込むようにご来店 「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ。」 看板娘が動いたので ビックリして 上下左右 キョロキョロ頭を動かして 落ち着いたのは 真横に長い バーカウンターの 端の席 「当店のご利用は 初めてですか?」 冷水を注いで差し出せば コクンと小さく頷いて 看板娘が咥えたメニューに またビックリして 持ち合わせと相談しながら 遠慮がちに指差しました。 「当店では、お客様のご要望に合ったお料理を提供いたします。ご希望はございますか?」 突然聞かれたご要望に お客様は動揺していました。 しかし私は薄々気付きます。 それが 今に始まったことではないということを ポットのお湯がポコポコ音鳴らし 静寂に響き渡る空間 その壁を破壊するような けたたましい機械音 すみませんとバッグをあさり お客様は四角い機器を取り出しました。 ついでにパラパラ飛び出すのは 修復不可能な紙切れたち 見えない相手に頭を下げて 声は感情を懸命に抑えていました。
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