「混ざり混ざった思いの中で」

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「混ざり混ざった思いの中で」

あいにくの お天気でも 新月の日には ひと味加える エッセンス。 今日は温かいお飲み物のご注文が多いです。 コーヒーカップを洗う流水音に かすかな雨音が混ざります。 うわっ 本物っ 看板娘を手であしらって お客様はビニール傘を立て掛けました。 「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ。」 お客様は店内を見渡すと 窓のないテーブル席へ向かわれました。 看板娘はやや不機嫌 好き嫌いは避けられません。 メニューとグラスを満月お盆で 静かな店内へ運びます。 「当店のご利用は 初めてですか?」 えぇ、  ノートパソコンを開きながら、お客様は答えました。 「当店では お客様のご要望に合ったお料理を提供いたします。」 じゃあ すぐに食べられるものにして お客様は 画面とにらめっこ カタカタ打ち出される文字は 小さく細かく 日本語と数字が入れ替わり バーカウンターに戻ると 看板娘が珍しく しっぽを下げて休憩中 相当落ち込んでいるそうなので そっとしておきましょう。 カタカタカタカタ・・・ 規則的な無機質和音は 天井に浮かぶ星屑を ゆらりゆらりと ときめかせ その1つがコロッと落ちて お客様の手のひらへ えっ!?何っ? お客様が驚いた頃 私は布で星を拭き取り また天井へ ゆらり  ゆらり  ゆらり   戻っていきました。 どうなってるの・・・? かすかに残る光の経路を お客様は眼鏡を外して見つめていらっしゃいました。
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