16人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の手付きがエロイ
その日の昼ご飯は、丸亀製麺のうどんにした。
ご飯ものはさけたぞ。夕ご飯が鰻丼かと思うと、つい顔がゆるむ。
職場は少しクーラーがかかりすぎなので、温かいうどんが体に嬉しい。
ネギも、たっぷりといれた。私は、天かすはあまり好きじゃない。
さささっと平らげて、「ごちそうさま」とともにお店を出て、職場に戻る。
さて、その日の夕方、部屋に戻ると彼はまだ帰っていなかった。
首をキリンさんのように長くして待っていたら、六時すぎだろうか、彼が帰ってきたよ。
「ただいま。」「お帰り。」
玄関までお出迎えに行くと、彼は私との約束を守り、ちゃんとスーパーの袋を持っていた。仕事帰りにスーパーに寄ってくれたんだね。
鰻以外にも、何か買っているらしい。めっちゃ、テンションが上がる。
「はいはい、直ぐに支度を始めます。お姫様は、あちらでお待ちください。」
彼は意地悪く笑った。
「もう、わかってるくせに。鰻がどう美味しくなるか、見たいに決まってんだろう。」
私は、彼の肩を軽くはたいた。
「仕方ないなあ。教えてやるとするか。」
本当は見せたくて仕方がない彼は、いそいそと台所へ向かった。
「ジャーン。国産のジャンボ鰻、しかも浜名湖だぞ。一尾で2180円だ。どうだあ~、まいったか。」
「ははあ~、まいりました。」
私は素早く一人1090円かと計算した。
ぶっちゃけ、それが安いか高いかわからないが、彼はご機嫌で調理を始めたので良しとする。
彼は、まず、お湯を沸かし、鰻にかけ始めた。
「ちょっと、何するの。馬鹿じゃない。タレが、落ちるじゃないの。」
私が慌てて叫ぶと、彼は憎たらしいくらい落ち着いて、こう答えた。
「大丈夫、タレは買ってきた。こうやって、タレを洗い流すとともに、焦げもとるんだ。」
「ふう~ん、そうなの。」
私は悔しいが、黙って見守ることにした。
彼は、キッチンペーパーで表面の水気をふき取り始める。
その手つきが優しくて限りなくエロい。
私もお風呂から上がったら、彼に・・・・。なんて、妄想をしてしまった。
そんな私の妄想関係なしに、彼は突然聞いてきた。
「関西風、関東風、どっちがいい。」
「えっ、美味しかったらどちらでもいいけど。」
「・・・・・・・」
こんな時の彼の眼は、メッチャ怖い。
良く言えば、美食の伝道者、はっきり言えばこだわりの職人、いや頑固親父と化す。
「大変、失礼しました。関西風と関東風の違いは何ですか。無知な私に教えて下さい。」
「猿にでもわかるように、教えてあげよう。関西風は、サクサクふわふわ。
関東風は、トロトロふわふわだ。さあ、どっちにする。」
「じゃあ、関西風でお願いします。」
実のところ、よくわからないが、私は即答するのであった。
最初のコメントを投稿しよう!