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山本くんがドアを開け、私は顔を廊下に突き出した。準備室の前に、由紀と詩織、そして神崎先輩とその友人であろう女子生徒が立っていた。神崎先輩は由紀の制服を掴み、「さっき逃げたよなぁ」と凄んでいる。
「神崎、もうやめようって」と先輩の友人が間に入り、由紀にかかっていた手を引きはがす。しかし先輩は聞く耳を持たない。
「どこのクラスかって聞いてんだろっ」
その言葉に無言を突き通す二人。反抗心から声を出さないのではない。怯えて声も出ないのだ。
その光景を見ていた山本くんは「俺、ちょっと行ってこようかな」と、身を乗り出し始めた。私は慌てて彼の腕を掴んだ。
「女子同士のトラブルだし」
「でも……」
「私が、行くから」
声が上ずっているのが自分でもわかった。でも山本くんを巻き込みたくなかった。
「相手は三年生だよ」
「絡まれてるの、私の友達だから」
正直行きたくなかったが、見てしまった手前、見過ごすわけにもいかない。何もしなければ、きっと山本くんが出てくる。
私は準備室を飛び出した。お腹の底から口元に何かが込み上げてくるのがわかった。息を吸い込んでそれを必死に抑え込み、二人の元へ駆け寄った。
「沙奈……」由紀と詩織は涙目で私を見ると、小走りで近づき、そのまま私の背後へ回り込みブレザーの裾を掴んで隠れた。
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