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瞬く間に、神崎先輩対私の構図が出来上がってしまった。私はこの身長がゆえに、いつも先頭を切らされる。勇気を出して立ち向かうのは、私の役目。半ばあきらめの境地だが、怖いことには変わりない。
「なに?」
先輩の鋭い目つきが私を刺す。目を合わすことなど到底できず、うつむくことしかできない。
「野宮と言います。二人の友達です」絞り出すような声で答える。
「お前に用ないんだけど」と舌打ちが返ってくる。
先輩の手が勢いよく私の胸に伸びた。押しのけようとしていると即座に察知した。反射的に先輩の手を掴み、強く握りしめていた。
「や、止めてください」
「やる気?」
その言葉に空気が張り詰める。しかしここまで来たら後には引けない。手を掴んだまま、屈めていた姿勢を伸ばす。学校にいる時は普段から猫背を心掛けていた私が、これほどまでに背を伸ばすことなどない。
大きく空気を吸って、ゆっくりと直立し胸を張る。握りしめていた手を放し、先輩を見下ろす。先輩とその友人の顔色が変わった。明らかに私の大きさに怯んでいる。
すかさず上半身を大きく下に振りかぶり、頭を下げる。
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