片思い観測

12/15
前へ
/15ページ
次へ
「すみませんでした。友達を代表して謝ります」  一瞬、先輩は大きく身体を後ろに引いた。足元を見ればわかる。私が大きく動いたものだから、手を出してくるのではと身構えたのだろう。  無言だった。  先輩の友人は「もういいじゃん」と先輩を突っつく。  私は身を起こし、前を向いた。 「2年2組の野宮沙奈です。いつでも、も、文句は受け付けますので」  少しどもってしまったが、まっすぐな視線を保って言えた。先輩は私を一瞥すると、鼻先であしらった。そして「服と眉毛直しとけよ」と後ろを向き、風を切るように友人と廊下を歩いて行った。  先輩がいなくなるのを見届けて、私はその場にへたり込んだ。由紀と詩織は「ごめんね、ごめんね」と言いながら、私に抱き着く。その声が遠くからぼんやりとしか聞こえないほど、私は脱力していた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加