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「すみませんでした。友達を代表して謝ります」
一瞬、先輩は大きく身体を後ろに引いた。足元を見ればわかる。私が大きく動いたものだから、手を出してくるのではと身構えたのだろう。
無言だった。
先輩の友人は「もういいじゃん」と先輩を突っつく。
私は身を起こし、前を向いた。
「2年2組の野宮沙奈です。いつでも、も、文句は受け付けますので」
少しどもってしまったが、まっすぐな視線を保って言えた。先輩は私を一瞥すると、鼻先であしらった。そして「服と眉毛直しとけよ」と後ろを向き、風を切るように友人と廊下を歩いて行った。
先輩がいなくなるのを見届けて、私はその場にへたり込んだ。由紀と詩織は「ごめんね、ごめんね」と言いながら、私に抱き着く。その声が遠くからぼんやりとしか聞こえないほど、私は脱力していた。
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