片思い観測

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「や、山本くんこそ、何で天文部やろうと思ったの?」  卑怯だと思ったが、質問を質問で返すことにした。 「ああ、小学校の頃にやった観測会、覚えてる?」 「も、もちろん」 「当時は星のことなんて、全く知らなくてさ」 「山本くんが星に詳しいから、みんなに教える会じゃなかったっけ?」 「違うよ。みんな星も知らないのに観測会やろうってなって。必死に勉強したんだよ。勉強してきたの、俺だけで、みんなに教えて回ってさ。それが大好評で……。あの時、みんなに教えてなかったら、星に興味持ってなかったな」 「わ、私も教えてもらった」 「じゃあ、野宮のおかげだ」  山本くんがそう言って笑う。彼が天文学部にいる結果の過程には、少なからず私が関わっていたのだと思うと心が跳ねた。  ドン――。  と理科準備室のドアが揺れ、怒鳴り声が廊下に響いた。私と山本くんは目を丸くして顔を見合わせ、丸椅子を蹴るように立ち上がった。
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