仕事の流儀

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『今日はね、美味しかったよ』 毎日同じセリフの彼女。『今日もね』ではないところがミソだろう。 でも、表情が輝いているから、今日のは本音かな? 『これ苦手だけど、頑張ったよ』 「凄いね!ありがとう。次もお願いね」 『ははっ。次はできるかわからないよ』 「大丈夫。期待しているから」 『明日は何?』 いつもの彼が、食べたばかりで直ぐに明日を訊ねてくれる。楽しみで堪らないと、その笑顔が言っている。 「明日は何かな?楽しみにね」  ああ、幸せだ。  少しづつ好き嫌いが無くなる瞬間に立ち会えたり、偏食の子が少しだけ頑張ってみせてくれたり、そんな時は拍手喝采をしてしまう。  ちょっと上手く作れなかったかなと、反省する日も彼らは『美味しかったよ』と、囁いてくれる。  ああ、幸せだ。  嫌なことも、辛いことも、理解してもらえないことも、仕事なんだから何処にでも、誰にでも至極当然ある。でもこの時ばかりは、彼らも私も『食』を通して優しくなれる瞬間なのだ。 Fin.
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