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 その日から時々晶は悠斗の部屋へと助けを求めに行った。  壁越しでいいから、と初めは言ったのだが、壁越しだと他の部屋にも聞こえるため、悠斗が他の住人に怒られてしまった。  一度は諦めたのだが悠斗が、じゃあうちに来たらどうかな、と提案してくれ、なんでも縋りたい晶はそれに甘えることにした。  もちろん初めは、他人とこんなに距離を縮めることが怖かった。悠斗が、というわけではなくて、誰かと仲良くなってそれで離れた時、前田のようになるのではないか、という恐怖は常にあるのだ。  けれどこちらも頼る方だし、悠斗にこれ以上の迷惑も掛けられなくて、悠斗の部屋に上がったら、予想以上に居心地が良かったのだ。 この日もふらふらと悠斗の部屋に上がり込み、悠斗に誘われるまま食事を一緒に摂っている。 すっかり寛いだ晶は、冷蔵庫の前で晶のためのビールを取り出す悠斗に向かって口を開いた。 「悠斗くんは面倒見がいいね。兄弟いるの?」  晶に新しい缶ビールを手渡した悠斗が、弟が、と答える。 「でも、それと、晶さんの世話は少し違うかも」 「世話って……まあ世話になってるけど」 ペットかよ、と思ったが、実際似た感じなので晶は強く否定できずにそう答えた。悠斗がくすりと笑う。 他人の部屋だというのに、なぜか居心地がいいのは、食事の用意など、悠斗がテキパキ自分の世話を焼いてくれるからだろうか。それとも悠斗自身が優しくて明るくていつも楽しい話題を振ってくれるからだろうか。 友達でも初めからなんとなく気が合って仲良くなる人もいる。きっと悠斗とも波長みたいなものが合うのだろうと晶は勝手に思っていた。 「でも、別に気にしなくていいよ。俺だって、いい人じゃないし」 「……どういう、こと?」  聞き返すと、悠斗は晶の前にあったテーブルを端へと除けた。晶が驚いて悠斗を見つめる。 「晶さんは眠りたいんだよね」 「そう、だね。人として最低限動けるくらいの睡眠は取りたい」 「じゃあ、俺と寝よう」 「……は、い?」  悠斗はベッドを背もたれにして座っていた晶を囲うように体の脇に両腕をついて、晶を見つめた。 「セックスしよ、晶さん。くたくたになるまで動いたら、自然と眠れるよ」 「……いやいやいや、ないでしょ」 「俺はしたいよ。晶さんは? したくない?」  悠斗の片手がするりと下半身まで下りる。晶のスラックスの前立てに手をかけ、そこをするりと長い指が撫でていく。何度か指が往復すると、その指先はジッパーへと掛かり、ゆっくりと比翼を開かれる。 「ね、晶さん……欲しいのは俺の声だけ?」  耳元でささやかれたら、もう数か月こういったことをしていない体は、あっさりと悠斗の指を受け入れようとしてしまう。かろうじて残る理性が、晶の頭を横に振らせた。 「じゃあ、歌のお礼に抱かせてってのは? 俺、夜歌うと別の住人に怒られるんだよ」 「それは申し訳ないと思うけど……んっ……」  ベルトを開かれ、前を寛げたその隙間から急に中心を握られ、晶は思わず声を漏らす。その声を聞いた悠斗が気鋭な笑みを浮かべた。 「感じるんだよね? 余計な事考えないで、俺がすることだけ考えてよ」  下着の上から中心を上下に扱かれ晶は思わず目を閉じる。こんな手、さっさと払いのけて部屋に逃げ帰ればいい。けれどできないのは、すごく気持ちいいからだ。はっきり言えば今、悠斗の指にものすごく欲情している。  晶の中に残っていた欠片ほどの理性が完全に欲望に飲み込まれた時、晶はゆっくりと両腕を悠斗の肩に回した。 「これ……大人として合ってるのか?」 「うん、大正解だよ」  悠斗は微笑むと、そっと晶に口づけた。
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