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ゲランの町を出て一週間。 砂漠を通らず一旦北上して山のふもとの森林地帯を歩いてゆく。砂漠越えも過酷だが、その過酷な環境故に大蠍以外の魔物がいないのが幸いでもあった。  ステラ自身は初めての一人旅に於いて、当時何も知らぬままキャラバンと合流して途中のオアシスまで合流したが、今思えば賢明な判断であったと思える。逆に今現在通っている森林地帯のモンスターは獰猛だ。 初期の彼女だったら腕が立つと言えども一人では太刀打ちできなかっただろう。 「木々に隠れていて魔物から先に回り込まれることもありそうだ。僕とステラで前衛になるよ。」 コウはそう言って弓矢を片手に微笑んだ。 飛び道具を操る彼はいち早く遠くの魔物を見つけて先制したり、逆にうまく逃げる術も心得ていたからだ。  そしてステラは言わずもがな槍のリーチが長いので見通しが悪いところでは 有利だからである。ステラも頷いて同意した。 しんがりを護るのはキャロル。 馬車に乗るのは残りの二人である。 3人は急に襲いかかってくるフォレストパンサーを退治しながら進んだ。 「コウが先に敵を見つけてくれるから助かる。無駄に戦わなくて済むし。」 「そうかい?」 ボウガンを携え直しながら訊き返す。 「にしても、ここから君の家までどのくらいかなぁステラ?」 「あと10日くらいかけて進んだら私が暮らしていた山間への道への分岐点があると思う」 「そっか。」 コウは納得したように頷いて地図を確認して足を速めた。 一方馬車では。 「かー、この詐欺ペンダント何考えているのかわかんないわよねぇ。ステラの家に何があるんだろうかねぇ…。ステラ本人さえ めぼしいものがあった記憶が無いというくらいだし。」 メイは御者台にて振り返ってリーディに声をかける。本を読むにも揺れるので幌から周りを窺いながら彼は答えた。 「母親であるオーキッド王女がペンダントを護っていたんだから何か関係する物はあるだろうさ。」 「ふーん・・・。」 そう呟き再びメイは前を向いた。 と思ったらそのままの態勢で更にリーディに話しかける。 「ところでさ・・・うまくいった?」 「は?」 「一緒にゲランで一夜を共にしたんでしょ?」 「そーいうお前だってどうなんだ?」 「なに?あたし?おかげさまで素敵な紳士と 一夜を共にできたわ。」 あっけらからーんと答える舞姫にリーディは 苦笑した。何故ならステラと対照的で清々しいほどだからだ。 「なんとなくだけど、何もなくはなかったけど一線超えたって感じじゃないわよねーえ?」 「・・・。」 顔色変えずにまた黙る。 図星なのか?違うのか?メイは彼の様子から 探ろうとする。そしてしばらくしてようやくリーディは答えた。 「・・・さぁな。ただ。」 「ただ?」 「あいつは俺にとって特別だってことは確か。」 メイはある意味恥ずかしくて言えないセリフをさらっと 言えてしまう彼に驚いた。反面彼女は感じていた。 -リーちゃん忘れてない?ステラがなぜ戸惑っているのかを・・・。 * * * そして、 森を抜けつつ何日か進むと、ようやく山への分岐点が見えてきた。  彼女はここに着いた時に思いだした。約9か月前山を下りてペンダントの光を追随したことを。何もわからず、ただただ必死だった自分。夜になると悲しみが強まり、野宿するにも細心の注意を払い 孤独と戦ったあの日々を。 ―でも今は大丈夫、皆がいるから。 母さん…久しぶりに会えるね。 そうステラは心の中で呟いて、 一行は山を登り始めた。
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