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4
ステラは夜中に目が覚めた。長椅子から起き上がり、ランプに火をともし
カーテンを開けて外を覗く。
雪が再びしんしんと降り続けている。
彼女はガウンを羽織りショールも首に巻く。抜き足で仲間を起こさない様に台所へ行き、
戸棚を開けて何やら探す。そして一本の瓶を見つけると手に取って、再び居間に出た。
暖炉は一晩中火を絶やさぬようにしている。でないとこの時期火が消えると
凍死しかねないほど寒いのだ。
居間の机に突っ伏してリーディが読みかけの本を傍らに広げたまま寝ている。
ステラは苦笑して、傍にあったブランケットをそっと彼の肩に落とした。
それから彼女は玄関の扉を開けて、ランプを片手に飛び出した。
外は静寂に満ちていた。静かに降り積もった雪が音を吸収しているせいも
あるのだが。彼女はそれらをかき分けて、小さな墓標の前に立ちはだかった。
そう、亡くなった母の墓だ。
ステラは瓶の蓋を開けて、墓標に静かにかけた。熟成された果実酒の香りがする。
「これ、母さんが好きだったキイチゴのお酒。」
それをかけ終わると、彼女は再び呟いた。
「久しぶり・・・ただいま。」
雪は静かに振りつづける。
彼女の肩や頭に静かに積もってゆく。
「母さんが授けたペンダントの導きで・・・私は自分なりの使命を見つけて、そして母さんが何者なのか自分の父さんが何者だったのか・・・良くわかったわ・・・」
ステラは屈んでさらに言い続けた。
「もともと私はこの世に生まれる宿命であったのなら・・・母さんと父さんが恋に落ちたのも、運命だったのかな?でもどうして・・・たとえそうだったとしても・・・」
彼女は瞼を伏せた。
「どうして敵対している相手を好きになったの・・・?」
真実を知りたかった。
「私、魔族が憎い・・・でもね・・・?やっぱり血を引いていると思うと最初は
倒そうと思っても躊躇している・・・弱い自分もいたよ・・・」
ステラが雪を払った墓周りに健気に咲く蘭の花。
―この花の様に・・・私は強くなれるの?しなやかに・・・咲き続けられる・・・。
* * *
ぎしり・・・
隙間風が吹いて、ほんの少しだけ窓枠が音を立てて撓る。
その音で居間の机の上で突っ伏していたリーディが目を覚ます。
「やべ・・・またやっちまった。」
少し寝ぼけ眼で起き上がると、背中に掛かっていたブランケットがするりと床に落ちた。
「・・・あれ?これ・・・?」
拾いながら彼ははたと思った。
暖炉のすぐ近くで温かだったので、これを掛けた記憶は無い。
となると・・誰かが?
ふと窓を見ると、何かが灯っているのが見える。
外に誰かがいる?
リーディはガウンの上にさらにレザーマントをを羽織って、ブランケットを手に持ち
外への扉を開いた。
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