1/1
前へ
/7ページ
次へ

ステラは夜中に目が覚めた。長椅子から起き上がり、ランプに火をともし カーテンを開けて外を覗く。 雪が再びしんしんと降り続けている。 彼女はガウンを羽織りショールも首に巻く。抜き足で仲間を起こさない様に台所へ行き、 戸棚を開けて何やら探す。そして一本の瓶を見つけると手に取って、再び居間に出た。 暖炉は一晩中火を絶やさぬようにしている。でないとこの時期火が消えると 凍死しかねないほど寒いのだ。 居間の机に突っ伏してリーディが読みかけの本を傍らに広げたまま寝ている。 ステラは苦笑して、傍にあったブランケットをそっと彼の肩に落とした。 それから彼女は玄関の扉を開けて、ランプを片手に飛び出した。 外は静寂に満ちていた。静かに降り積もった雪が音を吸収しているせいも あるのだが。彼女はそれらをかき分けて、小さな墓標の前に立ちはだかった。 そう、亡くなった母の墓だ。 ステラは瓶の蓋を開けて、墓標に静かにかけた。熟成された果実酒の香りがする。 「これ、母さんが好きだったキイチゴのお酒。」 それをかけ終わると、彼女は再び呟いた。 「久しぶり・・・ただいま。」 雪は静かに振りつづける。 彼女の肩や頭に静かに積もってゆく。 「母さんが授けたペンダントの導きで・・・私は自分なりの使命を見つけて、そして母さんが何者なのか自分の父さんが何者だったのか・・・良くわかったわ・・・」  ステラは屈んでさらに言い続けた。 「もともと私はこの世に生まれる宿命であったのなら・・・母さんと父さんが恋に落ちたのも、運命だったのかな?でもどうして・・・たとえそうだったとしても・・・」 彼女は瞼を伏せた。 「どうして敵対している相手を好きになったの・・・?」 真実を知りたかった。 「私、魔族が憎い・・・でもね・・・?やっぱり血を引いていると思うと最初は 倒そうと思っても躊躇している・・・弱い自分もいたよ・・・」 ステラが雪を払った墓周りに健気に咲く蘭の花。 ―この花の様に・・・私は強くなれるの?しなやかに・・・咲き続けられる・・・。 * * * ぎしり・・・ 隙間風が吹いて、ほんの少しだけ窓枠が音を立てて撓る。 その音で居間の机の上で突っ伏していたリーディが目を覚ます。 「やべ・・・またやっちまった。」 少し寝ぼけ眼で起き上がると、背中に掛かっていたブランケットがするりと床に落ちた。 「・・・あれ?これ・・・?」 拾いながら彼ははたと思った。 暖炉のすぐ近くで温かだったので、これを掛けた記憶は無い。 となると・・誰かが? ふと窓を見ると、何かが灯っているのが見える。 外に誰かがいる? リーディはガウンの上にさらにレザーマントをを羽織って、ブランケットを手に持ち 外への扉を開いた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加