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小さな光を授かりし俺
そう。なんだかんだ言って彼は優しいのだ。
「ま、良いけど。ちょうど仕事がひと段落着いたところで部屋が散らかってるから、片付いたら呼ぶ。」
相変わらず物応じしない美を纏った顔にそう言われた。
「ちかぁ〜。。。神様。本当にありがとうございます!荷物を取って参ります!」
浮き足立って、店を出たはいいが飲みすぎた。そして一気にまた眠気が襲ってくる。
今日、千佳を飲みに誘った口実は家に泊めてもらうことが本命だった為、最低限の荷物は駅のロッカーに閉まってある。人気の少ない道をフラフラと歩き、やっとの思いで荷物をとり出し、千佳からの電話が来るまで駅の隣の広場のベンチで休むことにした。秋の夜のそよ風が心地よく、終電はとっくだったので人気も少なく、虫の音がだんだん子守唄に聞こえてくる。。。
「。。。。さん。。。。。さん!」
人の声が聞こえ、目を開けると前におじいさんが立っていた。白髪を丁寧に整えきっちりとした細身のスーツをきた、ドラマでよく見る執事がそのまま画面から飛び出てきた見たいな人だ。
「智さん。こんな大きな荷物を持って何処か行かれるのですか?」
意識を夢の中に置いてきてしまったみたいで、質問の意味をハッキリと理解できない。そんな俺に微笑みかけて話を続ける。
「何か、悩みがございましょうか?」
(悩み、、?あれ、なんで俺の名前を知っているんだ、、、?夢、なのか?)思い切り頬をつねる。
「いったぁ。」
自分をつねった自分の手に睨みをきかせ、そるからおじいさんの方へ目線を移し、疑問を口にする。
「なんで、なんで、俺の名前をしってるんだ?それから、何故俺が悩んでることもしってるんだ?」
おじいさんは微笑みを崩さず穏やかに口を開く。
「智さん。覚えてないかもしれませんが貴方から一ヶ月前にお手紙を頂きました。それも何通も。普段は差出人の個人情報は確認することは無いのですが、あまりに困っている様子でしたし、気になることがありましたので、直接お話を持ちかけたいと思いまして。」
言われてみれば、送ったかもしれない。一ヶ月前、会社をクビになって1週間俺はとにかく荒れていた。縋れるものには全て縋る。そんな気持ちで手紙を出した、気がする。
まさか、返事が来るとも思わなかったが。
「覚えてます。それでお話とは、?」
何故か敬語になる。おじいさんが口を開き、言葉を発する瞬間を見逃すまいと目をはる。
「私が、手紙サービスの中の人だが、是非君に働いて貰おうと」
「やります!」
最後まで聞かずに立ち上がって大きな声で答える。1ヶ月間しっかりとした仕事につく事が出来なかったのに、こんなチャンスは逃せない。
「あの、どんな内容なんですかっ」
「、、、おやおや。」
やはり、お酒の力は偉大だ。1番大切な所で意識が遠くなる。ドサッ。俺が崩れる音が聞こえた。
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