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やりますよ
「、、、おい。いい加減起きろ。」
「んぁ?」
体を揺すられ、名前を呼ばれる。この声には聞き覚えがある。
「、、、千佳ぁ?」
目を開けると、高い天井。それから大きなテレビに観葉植物。寝転んでいる俺がはみ出たりはしない大きなフカフカなソファ。
「どっ、何処だ!?ここは!!」
自分の家ではないことを認識して飛び起きる。そういえばもう家ないんだっけ。
「起きたら起きたでうるさいヤツだな。俺の家だよ。」
見慣れた千佳の顔が降ってくる。
「ほら、水。飲め。」
言われるがままにグラスに半分ほど注がれた水を飲み干す。
「あれ?なんで?おじいさんは?」
少しずつ思い出す眠る前の出来事。疑問に思うことがいくつも浮き上がってくる。
「その、おじいさん、がお前をここまで連れてきたんだよ。」
「なんでここを知ってるんだ?」
「お前が伝えたんだと。酔っててそんなことも忘れたのか?」
「あーー。記憶にない。」
「まぁ、また会うだろ。ほらこれ。お前にだとさ。」
1枚のメモ用紙を渡される。本状悟という名前らしい。それから電話番号が書かれている。
「そこに書いてある電話番号に気が向いたらかけて。だそうだ。一体彼はなんなんだ?」
「俺も詳しくは分からないんだ。あ!!千佳!俺、仕事手に入るかもしれない!!」
「そうか、良かったな。なぁ、俺もう眠いんだけど、寝ていいか?」
時計を見れば午前2時を回っている。
「ああ。仕事お疲れ様。それから、泊めてくれてありがとう!じゃあ、おやすみ」
そう告げて、背もたれの方に顔を向ける。と、背もたれの部分が倒された。ここは、いわゆるゲストルームでこのソファーはベッドになるタイプのもの。いやでも俺一人なら倒す必要全くないんだが。
「、、、千佳?」
「俺もここで寝る。ベッドに資料と原稿ばらまいたまま片付けずに家でてきたから寝るスペースがない。元々ここで寝るつもりだったが、お前が来たからな。」
そう言って俺の隣に寝転がり、少し厚めの布団を1枚、半分俺にかけてくれた。
「じゃあおやすみ。」
「お、おやすみ。」
ピッ。と音がして照明が消された。
彼とはそういう距離なのだ。小学生からずっと一緒にすごしてきてるのだから、今更一緒に寝るのもなんとも思わない。が、なにが悲しくて男と2人寝なければならないのだろうか。
しかし、そうはいってもやはり千佳は優しいのだ。布団1枚しかなくても、絶対俺にもかけてくれる。家にも泊めてくれる。愚痴も聞いてくれる。(反応はとてつもなく冷たいが。)
千佳の背中に向かって「ありがとう」と心の中で呟き、静かに目を閉じた。
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