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その年の秋、私の暮らしていた児童養護施設が警察に摘発され、私は、他の子供たちと一緒に、別の児童養護施設へとうつされた。
そこは、都内にあるとは思えないような、山奥にある小さな施設だった。
スタッフたちは、みな、私たちを、かわいそうな子として扱っていた。
私は、あえてそれを、否定しなかった。
もしかしたら、それは、本当のことかもしれなかったからだ。
ある日、児童相談所から来た山本さんという、少し、頭がぬくそうな女が、私に言った。
「辛かったでしょう。でも、もし、できるなら、あなたが、なぜ、あそこで暮らしていたのかを話してもらえないかしら」
「はあ」
私は、迷ったが、その女の、いかにも、自分は、正しいでしょ、という態度が可笑しくて、私のそれまでの人生について話してやることにした。
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