銀色の光の下で

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去年喪愛女 今年喪愛子 昨年、愛娘を亡くし、今年は愛息も失ってしまった 自身を慰めようと紙上に筆を走らせていたのだが、いつの間にか眠ってしまったようだ。ふと窓辺に目をやると銀色の光が射し込んでいた。 そういえば今日は一年で一番月が美しいという中秋だ。彼女は窓を開けた。真っ先に視界に入ったのは蛍火だった。 「そういえば夏の夜、子供たちは中庭で蛍を追っていたなぁ」 舞うような青白い光を見てながら、そのようなことを思い出す。 「お母さま、見てみて、とてもきれい」 突然、幼い声が聞こえて来た。 飛び交う蛍の中に幼い兄妹の姿があった。彼女は庭に飛び出し二人のそばに駆け寄る。 兄妹は以前と同じように彼女に纏わりついた。 「お母さま、行きましょう」 「ええ」 二人の子と手を繋いで彼女は月光の中を歩いて行った。 「若さま、先ほど金家から使いが来て‥景樊お嬢さまが亡くなったそうです」 姉の死を報せる侍女の言葉に端甫は茫然とするだけだった。
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