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第二話 最後通告
「目立ちまくってたぞ」
兄の凛太郎はアルゼンチン料理のレストランの席で腕を組むとため息をついた。
兄とレストランの最寄りの駅で待ち合わせをしていた私は、彼を見つけると巨体を揺らして駆け付けたのだが、兄はとてもイヤそうな顔をしていた。
「悪い意味だからな」
「お兄ちゃん・・」
私は兄に丸い体を傾けると忘れる勇気も必要らしいよと言った。
「何がだよ」
「見た目に惑わされないで。私の中身はかつての私と一緒だから、あの頃の痩せすぎの妹のことはもう忘れて」
「お前なあ、ちょっとは自分と向き合ってみろよ」
兄はため息をつくと私は外見だけでなく中身も崩壊してしまっていると言い切った。
「みんなの記憶に残ってるのは偽りの私なの」
「昔のお前は別の意味で厄介だったけどなぁ・・・」
終いには今の私ではどんな男でも願い下げだと思うぞと言った。
小一時間兄から説教を受けていると、徐々に彼が急に連絡を取ってきた理由を知りたくなった。
「結婚する」
さらりと報告した兄を二度見すると、私は今なんて⁉と聞いた。
「だから結婚」
「ほほぅ」
私はお兄ちゃんも三十代半ばだもんねと言うと、お招きくださりありがとうと喜んだ。
「バカ者」
「へっ?」
「誰が招待すると言った」
「えっと、私妹だよね?」
兄は私をじっと見つめると離別の時だと言った。
「お兄ちゃんが選んだ人なら私のことも認めてくれるって」
彼は頭をふると、答えはノーだと断言した。
「あいつはだらしない人間に殺意を覚えるタイプなんだ」
彼女と兄との関係は血の繋がりを超えるものなのだろうか・・。
まだ会ったこともない兄のお嫁さんに憎しみを抱きそうになったが、兄の顔を見たらもう決まったことなのだなと諦めるしかなかった。
お幸せにと言って兄と別れると、私はゾンビのようにふらふらと家に戻った。
目を覚ませということなのだろう。
正直数年前から自分の容姿が見るに堪えないと言うことはわかっていた。
間違いを正すときが来てしまった。
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