月が綺麗ですね

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「でも、もういい時間だな。  そろそろ寝るか。」 賢吾は、立ち上がると、窓を閉めてカーテンも閉めた。 ビールの空き缶を流しに置き、 「風呂、用意しておいたから、入ってこい。」 と促してくれる。 よく見ると、賢吾は、もうお風呂に入ったようで、洗いざらしの髪に部屋着だった。 今さら気付くなんて、いかに周りが見えてないか思い知らされた気がする。 「賢吾は?」 「俺は、もう寝るよ。  何?  もしかして、一緒に風呂に誘ってる?」 賢吾は屈んで私の顔を覗き込む。 「誘ってない!!  さっさと寝れば!?  おやすみ!!」 私は言い捨てて、脱衣所に駆け込んだ。 ドアの向こうから、ケラケラと賢吾の笑い声が聞こえる。 賢吾、一体、何を考えてるんだろう。 何のためにうちに来たんだろう。 マンションの建て替えで追い出されたなんて、絶対嘘。 賢吾なら、建て替えが決まってたら、ちゃんと次の所を間に合うように探すはずだもん。 私は、お風呂に浸かりながら、考えるのは賢吾のことばかり。 だからかな。 お父さんやお母さんのことをあまり考えることなく済んでいる。 賢吾のおかげだと思うのは、ちょっと癪だけど。
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