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パソコンデスクに向かい、煙草を吹かしていると、背後に人の気配がする。慌てて振り向くと、美人が立っていた。驚きで体が固まる。胸の前で、手をもじもじさせながら、はにかんでいた。
「こんばんは、驚かせてごめんなさいませ。わたしくしは書き物の女神です。得意な万年筆で意見を伝えさせて頂きます」
封筒と便箋と万年筆が手のひらに現れた。ホンモノの書き物の女神だろう。差し出された白い封筒を受け取る。書き物の女神らしく、喉に言葉はない。封筒を開ければ、“一筆申し上げますと、”白い便箋に一行だけ書かれている。書き物の女神さまは、事務椅子に座っているオレの横で前のめりになった。パソコンのモニターに映る、オレの作品を熟読している。また、手紙を書き出してオレに差し出す。
〈前略 叫んでいた通り、御貴殿が神様の小説作品ですわね。 かしこ〉
「あ、はい」
オレは恐怖で背筋が寒くなる。逆らわず首肯していた。女神なる女がオレの両肩に手を置いて、瞳を輝かせ、首を傾けながら唇の端を上げている。また、便箋にペンを走らせていた。
封筒を渡され、オレは手が震えてしまった。封筒をビリビリにしながら、開封する。
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