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日向はその恋人に告白されて付き合ったらしかった。でも結局その恋人とは性格が合わなかったようで、少し経つと別れていたけれど。
その時の私は、それを聞いて安心し、良かったとさえ思ってしまった。自分の想いよりも好きな人の幸せを願う、なんてよく言うけど、私にはそれが出来なかった。どうするのが正解かなんて分からないし、正解なんてないのかもしれないけど、素直におめでとうも言えない自分が嫌いになったりもした。
告白する勇気なんてなかった。今の関係が壊れるのが嫌だったから。日向と、今まで通りに話せなくなる可能性が少しでもあると考えたら、告白なんて出来なかった。でも、伝えたいと思っていたことも本当で。いつまでも立ち止まっていないで、そろそろ前に進まなきゃいけないと思った。
だから今日こそは、2人で花火をした後に告白しようと決めていた。
「せーのっ」
2人で同時に線香花火に火をつける。空から優しく私たちを照らす月の光と、パチパチと音を立てながら弾ける花火を見つめながら私は小さく深呼吸を繰り返した。手が震えているのが自分でもよく分かった。日向が知らない私の秘密なんて、私が日向のことを好きだということくらいしか思いつかない。ゲームに負けたから告白、なんてことにはなりたくない。どうか、勝てますように。
そう願っていた次の瞬間、ぽとりと線香花火の火種が落ちた。
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