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ムーンチャイルド
昔々、ある王国に1人の王子が生まれました。
月明かりの美しい夜に生まれたその子供はトトと名付けられ、王と王妃に大事に育てられました。
トト様はきっとお優しい両親に似た素敵な王子になるだろう。
王国に住まう民達は皆、同様の期待に胸を膨らませていました。
しかし、残念ながらそうはならなかったのです。
トトには生まれつき不思議な力がありました。
重い物を浮かせたり、手を触れずにコップを壊したり、直したりする魔法のような力。
それを見た人々は皆王子のことをまるで神の生まれ変わりの用だともてはやします。
力は年を重ねるごとに増大していき、トトが10歳になった頃には天候すらも操れるようになりました。
そして残念なことに、彼はその強大な力でイタズラを楽しむようになったのです。
今日もトトはふわりと自分の体を浮かし、自分の部屋の窓から城を抜け出して街へと出かけます。
風に身を任せながら自由気ままな飛行を楽しんでいると下の方から王国に住む人々の話し声が聞こえてきました。
「昨日、またトト王子が変な力を使ってうちが飼ってる牛達を宙に持ち上げたりしたもんだからすっかり怖がって今日は全然乳が出やしない」
「うちなんて王子が起こした風のせいで洗濯物全部どこかへ飛ばされちゃったのよ。おかげで新しい服を買いに行かなきゃならなくなったわ」
どうして王子はあんな風になってしまったのか。
街の至る所から聞こえてくるのはトトへの不満ばかり。
それを聞いた彼は怒りました。
なぜ皆はこんなに強い力を持っているボクを認めてくれないのだろう。すごい王子だって言ってくれないのだろう。
民衆の声を聞くのが嫌になったトトは天候を操って街に大雨を降らせました。
大粒の雨に打たれながら、雷に怯えて叫び声を上げながら自分達の家へと帰っていく人々。
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