手先は器用、恋は不器用

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昔から手先だけは器用だった。 趣味は折り紙。いわゆるカメラとか風船のような折り方のあるものだけでなく、計算を駆使して立体的な薔薇とか昆虫も作ったりできる。もはやちょっとした特技だと思っている。 そんな私だが、好きな人がいる。隣のクラスの小林くんだ。クラスマッチのとき、彼がシュートを決めて優勝が決定したときのあの笑顔。言葉には表せなかった。ただ彼が無性に輝いて見えた。 これが恋なのか、と気がついた。 それ以来、同じクラスの男子はそっちのけで、体育祭も2度目のクラスマッチも小林くんを見に行った。好きだとは気づいたが、特に何かしようとは思えなかった。そもそも何かして失敗したらどうしようとか、気持ち悪がられるのではないかとか、考えてしまい、結局何もできなかった。 その間、彼への想いは高まっていった。苦しかった。彼に知ってほしいような知られたくないような。そんな葛藤をもうすでに何万回したか分からない。 ある日、隣のクラスと合同の英語の授業で、小林くんが私の席に座った。席は指定されていたので、本当に偶然だったが、彼と接点を持てたことだけで嬉しかった。 彼が私の席に座る。彼に気持ちだけでも伝えてみようか。出来心だった。私は思い立ったら行動は早いらしい。 まず折り紙にあるメッセージを書き、丁寧に鶴を折った。それを私の机の上に置き、机に もメッセージを書いた。 なぜ鶴か。 鶴を飛ばしてでも、小林くんに届けたい想いがあったから。 机には、「鶴を開いてみてください」と書いた。 鶴には、「クラスマッチのときに小林くんを見たときから気になっています。 机の主より」と書いた。 これを見て、少しでも意識してくれたらいいな。 少しの不安と期待を胸に、授業開始の合図を待った。
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