【聖夜のひみつⅡ】

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タケトのこのバイトは正午前から始まり、今、空がオレンジに染まろうとしていた。 クリスマスケーキの箱はようやく半分を捌けた所。 その頃に、やっともう一人の日雇いバイトがやって来た。 「遅れてすんませんでした!クロスです、宜しくお願いします」 外国人みたいな名前、あ、もしかして黒須(くろす)っていう苗字かな。 サンタの衣装のフワフワ襟の下から、金のノルディック柄の刺繍の真っ赤なネックウォーマーが覗く。 なんか派手だなと思いながらタケトは彼を迎えた。 話を聞くと、元々来るはずだった派遣バイトのヤツが、急に連絡がつかなくなって、会社側が代わりの人間を探すのに手こずったーーーこんな日だから誰からもOKが貰えずーーーという事だった。 それなら仕方ないなと、タケトはさっきまでのイライラを帳消しにした。 「さぁ、どんどん捌いていきましょう! いらっしゃいませぇ、美味しいクリスマスケーキ、まだまだありますよぉ」 そこからは、ウソみたいにケーキが売れていった。 陽が建物に隠れて闇が色濃くなって、もうすぐモールやもみの木のイルミネーションが点灯しようっていう時刻には、箱の数はもう両手の指で数えられるほどに減っていた。 …
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