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「おーいバイトくん。そろそろおしまいの時間だけど…
おおお?もう最後の一箱かい?すごいなぁ、一人でよく頑張ったね」
このクリスマスケーキを作ったお店の店長がタケトに声を掛ける。
「え?あ、いや、あの…」
俺一人だった?誰かいたような気がするけど。
「お疲れだったね。ここの片付けはうちでやるから、もうあがりなさい。
あ、もし迷惑でなければ、そのケーキ持っていって?あとこれ、長靴のお菓子詰め合わせ。今日頑張ってくれたごほうび。
いやぁーほんと、もっと残ってると思ったからねぇ、ありがたいよ…」
店長の話をぼんやり聞いていると、頬に何かひんやりと感じた。
「おっ…降ってきたか。冷えると思ったら。天気予報じゃなにも言ってなかったけどな。
ほら早くあがって。風邪ひくよ」
「あっはい、じゃあ…お疲れ様でした!」
店長に深く頭を下げた後、タケトは空を見上げた。
紙吹雪みたいに雪が舞い、それをイルミネーションが照りつけてキラキラと光っていた。
【ユキムシが雪を連れてくる】
急にこのフレーズが浮かんで、なんのこっちゃと首をかしげながら、サンタの衣装のまま上からダウンジャケットを着込んで、自転車に跨がった。
ケーマを迎えに行かなきゃ。
このカッコ見たら何て言うかな、喜ぶ?呆れる?どうでもいいか、これが今日の仕事着だから。
頂いたクリスマスケーキと長靴のお菓子の詰め合わせをカゴに大事に入れて、タケトは雪で濡れ始めた道を自転車で走った。
彼の本来の目的を果たす為に。
(…メリークリスマス。ふふふ)
聖夜のひみつⅡ〈完〉
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[オリジナル執筆期間]
2015年12月23日~24日
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