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司祭様が扉の向こうへ行ってしまっても、歯抜けの男は座り込んだままだったが、熱いスープを飲み干すとだるそうに立ち上がって、同じ扉をくぐった。
そこは広い吹き抜けで、とても立派なもみの木が一本立っていた。
てっぺんに星の輝きを象った飾りは聖夜らしかったが、火の灯った無数の燭台は異様に見える。
生木に炎、よく惨事にならないもんだなと、歯抜けの男がぼんやり思った事が伝わったのか、
「本来の炎とは別物なのですよ、あれは他を燃やしたりしないのです。
まあ、一応バケツは用意してありますがね」
司祭様はクスリと笑いながら言った。
ふうん、と歯抜けの男は曖昧に受け取って、上を見上げながらもみの木の周りをゆっくり歩いた。
歯抜けの男は探していた、とびきり灯火の小さい、消える寸前の燭台を。
けれども、どれも、ごうごうに灯をたぎらせていた。
…
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