チュールとレースとベルベット【差分】

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「……解った」  ひゅう、と口笛が鳴り、男たちはそれぞれに腰のベルトを緩め始めた。 「武士の情けで、俺が一番手を引き受けますよ。こいつらより、慣れてますからね」  屈辱を嫌と言うほど味わいながら、尊は床に手を置いた。  膝をついて、犬の姿勢をとった。 「いや、何か勘違いしてませんか?」  海斗は、そんな尊を仰向けにいざなった。 「こうしないと、顔が見えないじゃないですか」  いい表情、期待してますよ、と海斗はどこまでも食えない態度だ。 「頑張れよ、海斗!」  はやし立てる仲間に、海斗はやけに低い声で凄んだ。 「動画とか、撮るんじゃねぇぞ」 「わ、解ってるよ」  どうやら、このグループ内の頭は、この海斗という男らしい。  尊はそう分析していたが、そんなことはすぐに忘れてしまった。
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