11人が本棚に入れています
本棚に追加
テディベア、ビデオ、レモン
今日は晴れの結婚式なのに、新郎は来ない。
「花嫁を何時間も待たせるなんて最低」
このハワイの教会も、借りている時間は、あと一時間で終わる。
その時に上空にヘリの音が聞こえた。
レモンが空を飛ぶような、レモンそっくりなヘリコプターだ。
私の側に着陸した。
なんと彼がヘリコプターの扉を開けて降り立った。
「お待たせ」
「あんた、ハワイだけでも大金使ったのに、ヘリコプター代はどうするの」
「心配要らないから、大丈夫」
司会者から、式を始めるアナウンスが有った。
彼は神父さんの隣に移動した。
「新婦と、お父様の入場です」
するとテディベアの着ぐるみが私の隣に立った。
「えっ、何」
司会者が、テディベアはお父様ですと放送した。
「ウソみたい」
やがて式が終わり、司会者が、ビデオレターをスクリーンに映した。
「沙織ちゃん、結婚おめでとう、パパは火星に居るよ」
「火星?」
「君のお父様は、今回の結婚費用を稼ぐために、火星ロケットに猿の代わりに乗ったのさ」
「えー」
「大丈夫、事故の保険にも入っている」
「パパ」
「ハワイの親族の飛行機代金、高級ホテルの宿泊費、そして大人気の結婚式場代金を稼ぐために、パパは火星ロケットのパイロットに志願した」
「そうなのね、パパごめんなさい」
「大丈夫だよ、パパは君のために火星の土になれたらほんもうだ」
花嫁は泣き崩れた。
化粧も涙で流れて、泣いて地面を転げてドレスは台無しだ。
テディベアの中にいた花嫁のパパは困った。
「しまった、サプライズにも大金使ったのに、出る時期を失ったぜ」
最初のコメントを投稿しよう!