テディベア、ビデオ、レモン

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テディベア、ビデオ、レモン

今日は晴れの結婚式なのに、新郎は来ない。 「花嫁を何時間も待たせるなんて最低」 このハワイの教会も、借りている時間は、あと一時間で終わる。 その時に上空にヘリの音が聞こえた。 レモンが空を飛ぶような、レモンそっくりなヘリコプターだ。 私の側に着陸した。 なんと彼がヘリコプターの扉を開けて降り立った。 「お待たせ」 「あんた、ハワイだけでも大金使ったのに、ヘリコプター代はどうするの」 「心配要らないから、大丈夫」 司会者から、式を始めるアナウンスが有った。 彼は神父さんの隣に移動した。 「新婦と、お父様の入場です」 するとテディベアの着ぐるみが私の隣に立った。 「えっ、何」 司会者が、テディベアはお父様ですと放送した。 「ウソみたい」 やがて式が終わり、司会者が、ビデオレターをスクリーンに映した。 「沙織ちゃん、結婚おめでとう、パパは火星に居るよ」 「火星?」 「君のお父様は、今回の結婚費用を稼ぐために、火星ロケットに猿の代わりに乗ったのさ」 「えー」 「大丈夫、事故の保険にも入っている」 「パパ」 「ハワイの親族の飛行機代金、高級ホテルの宿泊費、そして大人気の結婚式場代金を稼ぐために、パパは火星ロケットのパイロットに志願した」 「そうなのね、パパごめんなさい」 「大丈夫だよ、パパは君のために火星の土になれたらほんもうだ」 花嫁は泣き崩れた。 化粧も涙で流れて、泣いて地面を転げてドレスは台無しだ。 テディベアの中にいた花嫁のパパは困った。 「しまった、サプライズにも大金使ったのに、出る時期を失ったぜ」
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