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「へぇ~! 八百年! すごいじゃん! 八百年前って言ったら……何時代? 平安? 鎌倉? 江戸?」
「知らん」
「ねぇねぇ、昔の人の悪夢って、どんなだった?」
興味津々で目を輝かせる美明に一転気を良くしたのか、獏はしばし目を閉じて記憶を辿ってから、カッと目を見開きベッドに両手をつくと、怯える様子で当時の夢を再現した。
「祟りじゃ……、土地神様の祟りじゃ……! 悪霊退散! 悪霊退散!」
「土地神様、悪霊扱いされてんじゃん」
手を叩いてゲラゲラと笑う美明。夢だからな、支離滅裂だ、と、獏は得意げに返す。
「まー、あんたが悪いヤツじゃないのはわかったよ。そんじゃ、私寝るから、あとよろしく。いやー、最近妙に悪夢が続いてさ、困ってたんだよね。ストレスたまってんのかなぁ? あんたが来てくれて良かった。それじゃ、おやすみ」
美明は言うだけ言って、サッサと布団をかぶってしまった。
「えっまだ獏らしさ何も見せ……」
慌てて止めようとしたが、次の瞬間には寝息が聞こえていた。
美明は新幹線よりも速く寝てしまった。
取り残された獏は、また一人でベッド脇に佇んだ。
ひとときの騒がしさが嘘のように、暗い部屋は静寂に包まれた。
ただキッチンの冷蔵庫だけが、鈍い低音を放ち空気を震わせていた。
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