ウメちゃん☆喰らいMAX

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. 重い空気が、辺り一帯に立ち込めていた。 完全に箸が止まったウメちゃんは、顔を歪めてしゃくり声を上げ始め、僕は焦って彼女に駆け寄っていく。 「ウ、ウメちゃん、大丈夫? もう、無理しなくていいから……ね?」 精一杯気づかった僕の声が、逆に涙腺の堤防を決壊させちゃったみたいで、 途端にウメちゃんは、ワンワンと大きな声を上げて号泣し出したんだ。 お客さん達もそれぞれにオロオロする中、すっかり目がイッちゃって笑い続けてるおやっさん。 やり場のない虚脱感が重いため息となって、僕の口からこぼれ落ちた。 戦いは……終わったんだ。 でもこんな形で終わっちゃうなんて、おやっさん……酷いよ。 これじゃあ、あんまりウメちゃんが…… ウメちゃんが…… 「ウメちゃんが、可哀想だよっ!」 僕は込み上げる憤りを抑えられずに、ついおやっさんを怒鳴りつけてしまっていた。 その何倍も怒鳴り返されるかと身構えていたら、泣きじゃくる大声が、先にウメちゃんの方から上がっていた。 「ウワワァーーンッ! 可哀想なのは、ウチやないっ! 小麦だって、もやしだって、豚さんだって、みんなみんな元は生きとった命やんかぁー! ウチら、いろんな命頂いて生きとんねんでっ! それなのに……それなのに……美味しく食べてあげな可哀想やろがぁーっ!」 「ウ、ウメちゃん……」 「それだけやないっ! 野菜だって、肉だって、いろんな人が汗水垂らして、一生懸命美味しくなるように育ててきたんやないかっ! おやっさんだってそうやろ!? このラーメンが美味しくなるように、寝る間も惜しんで鍛練してきたんやろ!? それなのに…… それなのに…… ウワワァアァーーンッ!!」 世界中の空気の流れが、一瞬にして止まったように感じた。 それだけじゃない、時間も、音も、何もかもがたちどころに凍りついていた。 ドクン…… ドクン…… と、心臓が高鳴りだす。 僕の胸の奥から熱いものが込み上げ、魂が震えてくる。 そうだ……その通りだ。 ウメちゃんの言う通りだ。 おやっさんは、デカ盛りメニューにこだわるあまり、料理人として一番大切な事を見失っていたんだ。 お客さん達も同調し、そうだそうだと口を揃える中。 渦中のおやっさんはと言うと── 床の上にぐったりとへたり込み、泣き崩れていた。 「ま……負けた…… お嬢ちゃん……俺が間違っていた…… もう……お代はいらねぇ」 おおおーっと一斉に上がった歓喜の渦。 手を取り合って喜ぶお客さんの中には、つられて泣いてる人もいる。 気がつけば、僕の目にもいつの間にか涙が滲んでいた。 これだから僕は── ウメちゃんが、大好きなのかもしれない。 .
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