エドワード・ホッパー(ナイト・ホークス)

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洗面所で歯を磨く。歯磨き粉と歯ブラシは恵美とお揃いにしている。べつに仲がいいからとか、そう言った理由でははなく、単純に俺がめんどくさがって、歯ブラシの銘柄や歯磨き粉の銘柄を覚えていないので、恵美と同じならば彼女が覚えているので、買い物をするときにいちいち悩まなくても良い、ただそれだけのことだ。 でクリアクリーン?アクアフレッシュ?よくわからない。なんでもいい。同じ理由で、恵美と同じ歯医者に行っているので、受付のお姉さんは俺のことをやたら褒めてくれる。 可愛い帽子ですねと、普通の地味なハンチングをかぶっていたらそう言われたので、俺はお世辞にしても、まあ悪い気はしない。そういう社員教育をしているのだろうか。接客業にも色々あるんだと思う。 水でジャブジャブ顔を洗い、ヒゲを剃る。今時電動シェーバーでそればいいのに、俺はなぜか貝印のT字カミソリでヒゲを剃る。親父も毎日貝印のT字カミソリでヒゲを剃っていた。もう鬼籍に入ってしまったが、親父の真似をするのはなんだか、親父のことを誇りに思っているようで、気分がいい。 決して裕福でもなく貧乏でもなく、庶民を絵に描いたような親父だったが、子供の俺から見て幸せそうに見えた。 仕事やプライベートでのグチは聞いたことがない。あまりイライラしてるところを子供に見せるのは、よくないと思っていたのだろう。まだ、俺には子供はいないが、親父みたいな父親になれたらいいと思う。 寝室に戻って、仕事着に着替える。仕事着といったって、いまはクールビズなので、シャツとズボンをはけばいい。ネクタイを選ばなくていいというのは、精神的に楽だ。そりゃあ、ネクタイ作っている会社は、大打撃を受けただろうけど、俺が決めたことじゃない。悪いのは政府だ。官僚だ。 黒のパンツに薄いブルーの半袖のシャツ。どこからどう見ても庶民の味方サラリーマンですな。 鏡を見ておかしくないか、確認をする。鼻毛が出てる時がたまにある。鼻毛ぐらい許してくれよと、思うのだが女子社員たちや恵美がみっともないですよというので、鼻毛バサミをホームセンターで安く買い、チョキチョキと処理をする。意外と鼻毛がなくなると、鼻くそがたまりにくくなることに最近気づいた。 親父はそんなことをしてなかったのに、今の世の中はおじさんに一手間も二手間もかけさせる。そんなに人の顔をジロジロ見ないでほしい。 毎週休みの日は、最低でも1時間は走っているので日焼けしている。色白がいいのは女子だけで、おじさんが白かったら不健康だ。日焼け止めなんて死んでも塗らない。
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