欽ちゃんの出前と奇跡の恋のお話

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 駅からすぐ。少し路地を入って。  ラーメン屋「十八番」。  大きなエプロンをかけた小柄な男が、店の前で看板を出している。白髪交じりの胡麻塩頭。捩り鉢巻き。汗。  お、らっしゃい。人懐っこそうな顔で笑う。  ここ、あっしの働いてるお店です。十八番。小さいっすけど、人気です。営業は夜だけなんすけどね。夜中まで満席なんすよ。この街、飲み屋多いっしょ。飲み会の後に、十八番の昔ながらの醤油味。これが定番なんです。  あっし? あっしの名前は欽二郎。なので、欽ちゃんと人は呼びます。電話番とお皿洗いと、出前があっしの仕事です。ここに来て、かれこれもう二十年になりますかね。正直、給料は安いです。でもね、住居とまかない付きで。なんてったって十八番ラーメンが毎晩食べれるんすから。おまけにって言ったら怒られますけどもね、大将がいい人でw  あっしも五十を過ぎまして、さすがに少ーしきつくなってきました。でもね、まだまだです。まだまだこれからです。なにより、十八番が人気ですから。この街に十八番あり、十八番に欽ちゃんあり、なんです。
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