肉は遠くにありて

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肉は遠くにありて

 『野菜』はゲット出来た。冷蔵庫に格納し、今や遅しと出番を待っている。  次は……そう、『肉』だ。  無論、普通の牛肉なら近所のスーパーでも充分、手に入る。  がしかし、今回は相手が違う。  肉質が硬くて脂身の少ない外国産では、彼女のお気に召さないに違いあるまい。それはNGだ。そこにも『こだわり』は必要だろう。  そこで僕は、同じ様に一人暮らしをしている友達のシロウに連絡をとった。 「あー……僕だけど。実は、『いい牛肉』を売っている店を知らないかと思ってさ」  《あ?牛肉?……何か特別な事でもするのか? 何……? リリカにカレーを食わせる? ああ、分かってるって。ネタバラシなんかしないから安心しな。しかし……難しいな》  電話の向こうでシロウが唸っている。  《一応なぁ……制限が無ければ心当たりはあるぜ》 「おお!流石だな!で、何処へ行けばいい?」  《お前、『三宮』って分かるか?……そう、『神戸』だ》 「こ……神戸ぇ!」  思わず声が裏返る。ここからなら、車で軽く5~6時間は掛かるだろう。それと『神戸』で『牛』という事は…… 「シロウ、それひょっとして『神戸牛』じゃぁ……」  恐る恐る尋ねる。  《ああ、そうだよ?》  さも当然そうに、シロウが返す。  《三宮の地下街にな、個人の精肉店があるんだ。そこで、神戸牛の肉をバラ売りしているんだよ。一度だけ買った事がある》
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