84人が本棚に入れています
本棚に追加
肉は遠くにありて
『野菜』はゲット出来た。冷蔵庫に格納し、今や遅しと出番を待っている。
次は……そう、『肉』だ。
無論、普通の牛肉なら近所のスーパーでも充分、手に入る。
がしかし、今回は相手が違う。
肉質が硬くて脂身の少ない外国産では、彼女のお気に召さないに違いあるまい。それはNGだ。そこにも『こだわり』は必要だろう。
そこで僕は、同じ様に一人暮らしをしている友達のシロウに連絡をとった。
「あー……僕だけど。実は、『いい牛肉』を売っている店を知らないかと思ってさ」
《あ?牛肉?……何か特別な事でもするのか? 何……? リリカにカレーを食わせる? ああ、分かってるって。ネタバラシなんかしないから安心しな。しかし……難しいな》
電話の向こうでシロウが唸っている。
《一応なぁ……制限が無ければ心当たりはあるぜ》
「おお!流石だな!で、何処へ行けばいい?」
《お前、『三宮』って分かるか?……そう、『神戸』だ》
「こ……神戸ぇ!」
思わず声が裏返る。ここからなら、車で軽く5~6時間は掛かるだろう。それと『神戸』で『牛』という事は……
「シロウ、それひょっとして『神戸牛』じゃぁ……」
恐る恐る尋ねる。
《ああ、そうだよ?》
さも当然そうに、シロウが返す。
《三宮の地下街にな、個人の精肉店があるんだ。そこで、神戸牛の肉をバラ売りしているんだよ。一度だけ買った事がある》
最初のコメントを投稿しよう!