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水
次の休み。
僕は車で1時間ほど走って、『名水が出る』と名高い山奥の神社に来ていた。
参道に車を置き、2リットルのペットボトルを3本ほど用意して湧き水の出る滝に近寄る。
水の湧いている滝には大勢の先行客が来ていて、防災用の大きな水タンクに何本も水を入れていた。どうやら彼らも『プロ』らしい。
ここの水は所謂『硬水』で、口当たりが『硬い』のが特徴である。これでお米を炊くと、米の味が際立つのだ。
もっとも、汲むのが中々に大変で、更に急な傾斜を上り下りしないと行けないから簡単ではないが。
長い順番の列を待ち、やっとの事で水を汲む。
冷暗所に置けば簡単には腐らないというのが助かる。
そうしてやっと。
『材料』は全て出揃った……と思うのだが。
「ふぅ……後は何か『隠し味』的な物を探さないとな。いかにも『市販のカレーでござい』では、面白くないだろうし」
色々調べていると、『ルゥは2種類混合するとよい』とか『隠し味にはチョコレートがよい』と書いてるのを見つけた。
そこで、先日に行った名古屋駅前にある自然食品の店で『有機栽培』のルゥと、ビターチョコレート1枚を購入してきた。
別に、市販のルゥでも悪くはないと思うのだが。
市販品はどうしても、トロみやコクを演出するために肉骨粉を使用する。すると腐りやすくなるから防腐剤を添加せざるを得ない。この防腐剤の味が、微妙に舌の邪魔をするのだ。
なので、以前に使った中では最も『自然の味』に近い感触があった『有機栽培』のルゥを採用したのだ。
「さて……」
僕は大きく息を吐いた。
「準備は出来た。後は、制作に掛かるだけだな」
そして、満を持してリリカにメールを入れる。
『今度の休み、カレーを食べに来るかい?』
返事はすぐに返ってきた。
《OK! 楽しみにしている!》
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