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いただきます
おっと!せっかく買ってきたチョコレートを入れるのを忘れていたじゃないか。これはいけない。
冷蔵庫から板チョコを取り出し、2欠片を切り出して鍋に加える。
15分ほど煮ると、表面に出来る泡が『油っぽく』なってきた。水分が飛んで、カレーの濃度が上がってきた証拠だ。
このタイミングで、火を止める。そして、ザルを逆さまにして被せ、その上から鍋のふたを置いてザルが落ちないようにする。
ここから、自然冷却に入るのだ。
和風の煮込みにしてもそうだが、この自然冷却によって味が具材に染み込んでいく。このまま常温になるまで放置する。約束の時間はお昼だが、そのために朝から仕込みをしていたのである。
時間を見計らい、お米の準備に取り掛かる。
最近は無洗米が多いが、今回買ったお米は流石に研がなくてはならない。
計量カップで2杯をキッチリ測り、ボウルに移す。
水を張って、軽く揉み込むようにしてお米を研いでいく。白い研ぎ汁が出たら水を捨て、また繰り返す。
3回ほど洗ったら、これを炊飯器の内釜へと移すのだ。
水は、計量カップでギリギリ2杯。
カレーやチャーハンは硬めの方がマッチするから、『1割増し』をしない。
それを、そのまま1時間放置する。
この時期なら、それほど寒くないからそれで十分だろう。僕は、11時ジャストに炊飯開始のボタンを押した。
1時間後、リリカが僕の部屋にやってくる。
炊飯器は無事、保温に入っていた。
「わぁ! 美味しそう! すっごい、いい匂いがしてる!」
胸の前で白くて小さな手を組んで、満面の笑みでリリカが嬉しそうな声を上げた。その目の前には、渾身の力作カレーが皿に盛られている。この日のために、皿とスプーンもお揃いで新調したのだ。
よかった……この笑顔が見れるなら、全ての苦労も報われるというものではないか。何だか涙が出てきそうだ。
ふと、リリカがスキップしながら台所へと向かう。そして調味料置の台からオイスターソースを持ってきた。そして。
リリカは弾けるような笑顔のままで、特製力作カレーにオイスターソースをドボトボと掛けたのだった。
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