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拝啓
桜花爛漫の候、貴殿におかれましてはますます
ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、なぜ私が貴殿にこのような直筆の手紙をお出ししたのかと申しますと、高校を卒業するまで携帯電話を持たない、と言う貴殿の強い意志に感銘を受けての事でございます。
この手紙を書くに当たり、失礼があってはいけないと『いんたーねっと』と言う便利な道具で書き方なぞ調べ上げ結構な時間を費やして書き上げさせていただきました。
失った時間は戻りません。
さて、本題にうつりましょう。貴殿におかれましては、いよいよ進路を決定する時期だと思います。特に希望もないとお見受けしますので、是非、我が大学を受験してみてはいかがでしょうか。
あの頃のような、すばらしい、ワンダフルライフをお約束しますよ。
お困りの際は同封している番号まで、お気軽にご連絡ください。
またお目にかかれるときをスタッフ一同、楽しみにしております
敬具
青田碧
佐倉清様
高校3年生の春。新しいクラスに顔なじみが一人もいないという事態に、クラス編成を考えた教師陣を心の中で恨む。愛想笑いでひきつった頬をさすりながら帰宅すると、件の手紙がポストに在った。
色々とツッコむべきところはあるが「いくらなんでもインターネットは知っている!」だけに留めた自分は忍耐強い、と清は思った。ずいぶん後になって分かった事だが、同封されていた電話番号は、手紙の差出人のものではなかった。
何れにせよ佐倉清は(上質な便箋に使い慣れていない感丸出しの万年筆の筆跡で書かれた)この手紙で、志望校を変更。口惜しくも指摘された通り、「受かるならどこでもいい」というスタンスから一変、猛勉強の末、1年後にめでたく合格を勝ち取った。
高校3年生の冬。連るむ相手がいなかったため勉強に集中できた事に、クラス編成を考えた教師陣へ心の中で感謝を述べる。
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