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「只今から、今後のまる研の活動について共通理解を図るための会議を行う」
碧が、可動式ホワイトボードの前に仰々しく立ち、咳払いをする。
「まず、我らまる研の最大の目的は、動物の生態を日々研究し生命の神秘に触れる事である。そして、最大の目標は、その拠点となるアニマルカフェの運営資金を得る事である!」
声高らかに碧が宣言すると、まばらな拍手が3人分鳴った。
勧誘期間が過ぎ、新入部員一名という上々な滑り出しの『あにまる研究会』通称『まる研』。その栄えある第一回目の部会が、今まさに開かれている。
「運営資金集め……そのためのサークルだったんですね」
清の脳裏に「私物と化す」の文字が浮かんだ。
「そうだったみたーい」
史安がノートに次回作のデザインをスケッチしながら他人事のように言う。
「シアンさん、今までにこんな本格的な部会ありましたっけ?」
蒼介が史安に小声で問う。「後輩ちゃんが入ったからだよ」「ああ、なるほど」
「そこ、私語が多い!」
少し頬を赤らめた碧がホワイトボードをコンコン叩いて注意した。
「軍資金集めの重要な鍵となるのが、十一月に実施される、学祭だ」
史安と蒼介が語るに、去年の学祭は相当ひどかったらしい。写真部の展示スペースの一画を借りて、動物の写真(写真部提供)を見ながらお茶をする、アニマル写真カフェを提供したのだが、予想通り大ハズレだったようだ。
「今年は新たな戦力が加わった事だし、去年の後れを取り戻せると踏んでいる」
碧が、清の方を見て頷く。
「来るその日に備え我々に何が出来るのか。部長として昨日寝ずに考えてきた。これが今後のスケジュールだ!」
碧がストッパーを外すと、ボード部分がくるりと回転し、箇条書きで大まかな予定が並んでいた。それにしても、部室に金庫に、何だか高級そうなホワイトボードまで。大学非公認の『あにまる研究会』は、どこから調達してくるのだろう。
・GW→課外活動で動物園へGO!
・夏休み→合宿!(行きたい場所募集中!)そろそろ出し物決めないとナ☆
・休み明け→本格始動!
・学祭→がんばろう!
「ちなみに、このホワイトボードの画像をみんなに送っておいたから、各自確認するように。解散!」
そう言って、碧はそそくさと退室してしまった。バイトがあるらしい。なんだか、いたたまれなくて逃げたようにも見えた。
清は碧からのメッセージを確認する。確かに、目の前のホワイトボードに書かれた文字がそのまま画像となって添付されていた。
「……チラシの裏?」
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